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高血圧

Hypertension

高血圧- Hypertension ―

高血圧とは

高血圧

血圧とは、私たちの体内を流れる血液が血管の壁に押し付ける力のことを指します。血圧は日常生活のちょっとしたこと(からだを動かす、寒さを感じるなど)で上昇しますが、こうした一時的な血圧上昇は、高血圧とはいいません。

「高血圧」の名前の通り、これは安静時でも血圧が普通よりも高くなってしまう状態を指します。普通の生活を送っている時でも、血液が血管に強く押し付けているとイメージしてみてください。これがずっと続くと、血管には大きな負担がかかります。

この負荷が長く続くと、血管の内側が傷つきやすくなり、その柔らかさを失い、固くなってしまうことがあります。これがまさに「動脈硬化」の始まりです。この状態が続くと、心臓や脳に重大な問題を引き起こす可能性があります。だからこそ、高血圧はしっかりと管理する必要があるのです。

こんな方は高血圧に要注意

次の項目で該当するものが多い人は、高血圧への注意が必要です。

  • 野菜をあまり食べない
  • 外食が多い(週に3回以上)
  • 濃い味付けの食事が好き
  • スナック菓子をよく食べる
  • 運動をほとんどしない
  • タバコをよく吸う(1日10本以上)
  • 両親・兄弟姉妹の誰かが高血圧
  • お酒をよく飲む
  • 睡眠不足気味
  • ストレスがたまりやすい

当てはまる項目が3つ以上ある方は、高血圧のリスクが高いと考えられます。早めに受診して医師の指導を受けるようにしましょう。

高血圧の病気のリスク

高血圧を放置すると、動脈硬化を引き起こします。以下に挙げるような重大な病気の発症リスクを高めます。

ここからは、高血圧によって引き起こされる可能性がある合併症を紹介します。

心不全、心筋梗塞、狭心症などの心疾患

血圧が高い状態が続くと、血管が硬化し、血液を全身に送るための力がより強く必要となります。これは心臓に大きな負荷を与え、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。心臓はこの増えた負荷に対応するために筋肉を強化し、大きくなります。これを「心肥大」と呼びます。この状態が引き起こす可能性がある問題として、心不全、狭心症、心筋梗塞、心室性不整脈などがあります。

心不全は、心臓がうまく血液を送れなくなる状態で、これにより呼吸困難やむくみなどの症状が現れ、生活の質が低下します。さらに、心臓を支えるために血液を供給している冠動脈が狭まると、狭心症が発生します。これは心臓に必要な血液が届かなくなる状態で、息苦しさや胸痛などの症状を引き起こします。

そして、狭心症がさらに進行して冠動脈が詰まると、心筋梗塞が起こる可能性があります。このリスクは男性の方が女性よりも高く、血圧がわずかに10mmHg上昇するだけでも、狭心症や心筋梗塞のリスクがおよそ15%増えると言われています。だからこそ、血圧の管理には十分注意が必要です。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など

高血圧は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中を引き起こすリスクを上げると言われています。脳梗塞とは、脳の血管が塞がってしまう病気で、これが脳卒中の大部分を占めています。一方、脳出血は脳の血管が壊れて血液が流れ出る状態、くも膜下出血は脳の動脈瘤が破裂して出血する状態を指します。特に、脳出血やくも膜下出血は死亡率が高くなります。

高血圧が続くと、脳卒中のリスクが大きく上昇します。例えば、血圧が10mmHg上がると、男性の脳卒中リスクが約20%、女性では約15%高まると言われています。なお、脳出血は特に高血圧と関連が深く、血圧を適切に管理することで、これらのリスクを大きく減らすことが可能とされています。

脳卒中により入院すると、30日後の平均的な死亡率は約15%に上ります。しかし、命を繋ぎ止めたとしても、運動や言語などの機能障害が残ることが多いのが現状です。長期間にわたるリハビリが必要になる場合も多いため、血圧のコントロールで予防措置を図るのが賢明だといえます。

慢性腎臓病

高血圧が長く続くと、腎臓障害を併発するリスクも高まります。腎臓は血液のろ過役割を果たし、尿を作り出しています。しかし、高血圧が持続すると、「糸球体」という細い血管が集まった腎臓の一部に損傷を与え、腎臓の機能障害や腎不全の原因となる可能性があります。この結果、尿中にタンパク質が漏れ出す「蛋白尿」が起きたり、体から排出するべき塩分や老廃物が十分にろ過できなくなる事態が生じます。

腎臓の問題は、さらに高血圧を進行させる可能性があり、これが原因で病状が悪化する悪循環に陥ることもあります。最悪の場合、人工透析が必要となり、生活の質が大きく低下することもあります。さらに、慢性的な腎臓病は脳卒中や心筋梗塞のリスクを高め、命に関わる事態を招くこともあります。ですから、むくみや疲れやすさといった腎臓の機能低下を示す兆候が見られた場合は、すぐに医療機関に相談することが重要です。

高血圧の治療法

高血圧治療の目的は、重大な病気の発症を防ぐことです。
高血圧の治療の基本は、食事療法と運動療法です。そのうえで効果が不十分であれば、薬の処方によって治療します。

高血圧の食事療法のポイント

塩分摂取量を減らす

塩分は私たちの身体にとって大切な栄養素の一つですが、摂取量が多すぎると身体に水分が溜まりやすくなり、高血圧の原因となってしまうことがあります。したがって、一日の塩分の摂取量は6g以下に減らしましょう。食事の塩分を1g/日減らすごとに血圧が約1mmHg減少し、心血管イベントも減らせることが報告されています。
塩味が少ない食事は少々物足りなく感じるかもしれませんが、料理の工夫により無理なく塩分を減らすことが可能です。例えば、「出汁の味を十分に活かす」、「減塩タイプの醤油や味噌を使う」などがおすすめです。このような食事の工夫については、医師や管理栄養士から具体的なアドバイスを受けると良いでしょう。

食べ過ぎに注意する

適度なエネルギー摂取は健康維持の大切な一部ですが、摂取量が多すぎると肥満に繋がります。肥満は、高血圧の発症や悪化に深く関連しているといわれているため、日々のエネルギー摂取量を適切に管理することが健康を守る鍵となります。1kg体重が下がるごとに平均0.5~2 mmHg血圧が下がるとされています。

1日に摂取すべきエネルギー量は、年齢や性別、日々の身体活動量、体重の状況、血糖のコントロール状況、合併症などを考慮しなけらばならず、人それぞれ異なります。例えば、米国では、飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、Ca、K、Mgの多いDASHダイエットの介入試験により、有意の降圧効果が認められています。これらを加味しなければならないので、具体的な適切なエネルギー摂取量については医師に確認しましょう。

お酒は適量を心がける

適度な飲酒は体によい影響を与えることもありますが、頻繁な飲酒や過度な飲酒は、血圧上昇のリスクを高める可能性があります。

さらに、お酒のおつまみは塩分の過剰摂取につながるうえに、エネルギーを取りすぎてしまう可能性があり、肥満を招く原因となるため注意が必要です。日々の飲酒量の目安としては、男性の場合、ビールでは中瓶1本、日本酒では一合、ワインでは2杯以下を心がけましょう。一方、女性の場合は、これらの量の約半分を目安にしてください。これにより、健康を維持しつつお酒を楽しむことが可能です。

野菜や海藻・果物を取り入れる

新鮮な野菜や海草、果物などに多く含まれるカリウムは、血圧を高めるナトリウムを尿とともに体外へ排出する作用があります。
一方で果物には果糖も含まれています。果糖を過剰に摂取すると、血糖や中性脂肪の上昇を招き、肥満のリスクも高まる可能性があるため、果物の摂取量には注意が必要です。

高血圧の運動療法のポイント

少し息が上がる程度の運動をする

適度な運動強度として、心拍数が上がり「少し息が苦しい」程度の有酸素運動を行うのが理想的です。日常的に、30分以上の運動を目指しましょう。たとえ忙しい日でも、10分でもいいから運動を行い、その習慣を毎日の生活に取り入れることが重要です。運動時間は1回でまとめて30分以上行う必要はありません。1日の中でいつでも可能な時間に分けて運動をすることで、日々の運動時間を確保しましょう。朝の散歩や帰宅後のウォーキングなど、生活の中で自然に取り入れられる運動方法も効果的です。

無理な運動をしない

運動療法で大切なのは、無理をせず自分ができる範囲で続けることです。無理をしすぎると、けがや挫折につながって長続きしないことがあります。さらに、急激に運動量を増やすのは体への負荷が大きいため、まずは軽度の活動から始めてみてください。例えば、家の清掃や車の洗浄、子供との遊び、自転車での買い物など、日常生活の中に取り入れられる身体活動を増やすことも有効です。
近年の研究では、週に2回、各回30分の有酸素運動を行うだけでも血圧を下げる効果があると報告されています。
運動療法の計画は、週間の全運動時間や総消費カロリーを基に設定するのが適していると考えられています。例えば、1回あたりの運動時間を長めに設定し、週間の運動回数を少なくするなど、各人の生活スタイルに応じて適応することが可能です。

準備運動をしっかりする

準備運動は、運動療法の要となります。突然の運動は筋肉に負担をかけ、怪我の原因となります。そこで、まずは体を軽く動かして血行を良くしましょう。例えば、足踏みや軽いストレッチが効果的です。これにより、体は運動モードにスムーズに移行し、安全で効果的な運動が可能となります。毎回の運動前に5分程度はこの準備運動を行いましょう。

高血圧の薬物療法のポイント

高血圧に対する薬物療法では、降圧薬が主に使用されます。これは、文字通り高い血圧を下げる目的で使われる薬で、高血圧薬や降圧剤とも呼ばれます。

降圧薬には多くの種類があり、患者の具体的な状況や持病の有無に応じて最適なものが選ばれます。降圧薬が行う主要な作用は、主に以下の5つのタイプに分けられます。

  • 血管を直接拡張し、血圧を下げる薬
  • 心臓に働きかけ、流れ出る血液の量を調節し、血圧を下げる薬
  • 尿の排出を促し、血液の総量を減らし、血圧を下げる薬
  • 自律神経に働きかけ、血管の緊張を緩和し、血圧を下げる薬
  • 血圧を高める物質を減らし、血圧を下げる薬

降圧薬の中には、他の病気を抱えている患者には使用が適さないもの、または用量や投与タイミングが非常に重要なものもあります。ですので、処方箋を受け取る前に、過去の健康状態、現在の疾患、そして病歴などを医師に詳細に説明することが大切です。

高血圧治療補助アプリCureAppHT

当院では、2022年9月1日に保険適用が開始された携帯用アプリCureAppHTを導入しています。本アプリ導入以前から、当院では高血圧で定期受診いただいている患者様に対して、運動や食事などの生活習慣改善の助言を行ってきました。様々な生活習慣の患者様に対し治療を提供していますが、日々の外来のみではお伝えしきれていないこともあるかもしれません。
このような状況に対して生活習慣改善のお手伝いをするのが、CureApp HT 高血圧治療補助アプリ®となります。

プログラムは下記の流れで6ヶ月行います。

  1. 高血圧に影響がある生活習慣の学習 (2週間)
  2. アプリから提示された生活習慣改善の実践 (1ヶ月)
  3. 患者様自身が改善する項目を決めて実践するお手伝い(4.5ヶ月)

本アプリは保険診療で取り扱う治療となり、月1回の定期的な受診が必要です。通常の診療料に加えて、3割負担の方で初回3,000円、2~6回目2,000円程度の自己負担費用がかかります。

『高血圧を指摘されたが、まずは生活習慣の改善で頑張りたい』
『食事や運動を頑張りたいが、どのようにしたらよいかわからない』
『血圧の薬を飲んでいるが、少しでも薬を減らしたい』

このような方におススメできるアプリです。興味がある方は診療予約の際、問診の欄に書いていただくか医師にお尋ねください。

治療方針に不安や疑問があれば医師に相談を

食事療法や運動療法、使用する薬については患者さんによって異なるため、必ず医師の指示にしたがって進めることが重要です。

高血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法が主軸となりますが、生活習慣の改善などで薬を飲まずに生活することが可能になる場合もあります。治療についての不安や疑問がある場合は、遠慮せず医師にご相談ください。

けいゆうメディカルクリニック 内科 循環器内科では、患者様個々の状況に応じた最適な治療を提案します。治療方針については分かりやすくご説明し、安心して治療を受けられるようサポートします。高血圧でお困りの方はぜひご来院ください。